どうして筋力トレーニングをするのですか?
WHO(世界保健機関)によりますと、日本人の平均寿命は2023(令和5)年の時点で男性が81.09歳、女性が87.14歳とされています。
そして、日常生活に制限なく暮らせるとされる日本人の健康寿命2023(令和5)年10月時点では74.1歳で、男女別では男性が72.6歳、女性が75.5歳とされています。
男性は9年間、女性は12年間不健康な生活を余儀なくされるということでもあり、この差を埋めていきたいものです。
そのためには食事や生活習慣の改善が必要となり、そのひとつが運動であり、代表的なものがジョギングといった有酸素運動や筋力トレーニングとなります。
日本の生活様式は欧米化しつつありますが、運動に関してはまだ意識が低く、アメリカが20%の参加率に対して日本は3%という話もあります。これは何とも寂しいですね。
1、筋力の重要性
筋力があれば、スッと動けるようになります。
階段の上り下りや徒歩での移動など、さほど苦にもならなかったものが苦になってくる、というのは筋力の衰えからくるものです。
筋肉が発達していると交感神経が刺激され、体内の成長ホルモンというものが分泌されます。
成長ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、代謝を活性化させる、筋肉の発達に関わるだけでなく、免疫機能の強化、老化現象をおくらせる、脂肪減少、骨密度の向上などの効果があります。
筋力があり動くことで生じる物質が、体を「若い」状態にしていきます。
反対に筋力がないと動かなくなるので、成長ホルモンも分泌されにくくなり、若い状態ではなくなってしまいます。
加齢により運動機能が低下してしまい、寝たきりなどの要介護状態になることを「ロコモティブシンドローム」(略してロコモ)と言われておりますが、筋力トレーニングなど日頃から運動を習慣にして成長ホルモンを分泌させつづけることが、ロコモティブシンドロームの予防にもつながっていきます。
令和6年、この酷暑において高校生の2割がロコモの可能性があるというショッキングなニュースに加え、「健康な状態と要介護状態の中間の段階の状態であり、予備能力低下により身体機能障害に陥りやすい状態のことの総称」という「フレイル」という用語も出てきました。
私見ですが、酷暑により外に出る機会が減ることや体を動かす気力を奪われてしまったのが、原因のひとつではないかと考えられます。
2、筋トレの効果
・筋トレの刺激で血流改善
日常生活では扱わないような重い負荷での筋トレや、息が弾む有酸素運動など、運動による刺激で血管が拡張して血流が流れやすくなっていきます。そして、血流が良好になることで動脈硬化などの予防にも繋がっていきます。
・心の健康にも影響がある
筋肉を使う運動を行うことで、脳内からエンドルフィンや幸福感を高めるセロトニンといった物質が放出され、心の健康にも効果があるとされています。
また、有酸素運動は安静時の心拍数を減少させるため、不安を感じた時などの心拍数増加も相対的に抑えられる効果が期待されています。
・筋トレは病気による死亡率を減らす
アメリカの研究では、20歳以上の男女約9,000人対象にして約6~7年の間、週単位のトレーニング頻度も含めて調査結果を行ったところ、トレーニングを継続して行っている場合としていない場合に比べて「すべての病気の死亡率が23%減少する」という結果がでたそうです。
なかなか、難しい調査だと思いますが、病気を予防する上では筋トレは見逃せないものではあると考えられます。
3、やせやすい体づくりを
基礎代謝とは体温維持、呼吸、心臓内臓を動かすなど生きていくために使われるエネルギーのこと。
基礎代謝の中で最も消費量が大きいのが筋肉。
ですから、筋肉が増えて活性化すれば交感神経が刺激され、それだけ基礎代謝も増えていきます。加えて、心肺機能も強化されるために酸素摂取量が増えて血行もよくなり、これも基礎代謝の維持向上につながります。
筋肉が増えればいつも通り生活していても、多くのエネルギーが消費されて「太りにくい」体を維持することができます。
基礎代謝量の多い体こそが痩せやすい体ということになります。
スポーツ選手は普段から激しい運動をしていますから基礎代謝量も高いですし、試合で結果をだすために日々厳しいトレーニングを重ねています。
また肉体労働などに従事されている方も、物を運ぶなど日常的に体を動かしているので消費エネルギーも比較的多いと思われます。
しかし、デスクワーク等普段体を動かす機会の少ない方はそうではありません。
運動嫌いの方やデスクワーク中心の生活の方こそ、筋力トレーニングをどんどん行うべきでしょう。
4、モナリザ症候群をやっつける
アメリカの男性肥満研究のデータからですが、肥満が維持されている原因のひとつに、過食によって交感神経が低下している結果がでています。
「モナリザ症候群」とは食べ物が平均の摂取量より低いのに、交感神経の活動が鈍いためにエネルギーが消費されにくくなっている状態のことで、肥満の方は自律神経が乱れやすい傾向にあると言えます。
運動するメリットとして発汗作用の促進、自律神経を整えるなどの効果があるとわかっています。「モナリザ症候群」によって生じた自律神経の乱れを、交感神経を活発にすることによって正常な状態に戻していくことが可能なわけです。
5、筋トレは病気に強いからだにもなり、心を癒す
前述したものの繰り返しとなってしまいますが、2017年、オーストラリアのシドニー大学からの研究報告から、週2回以上の筋トレは、死亡率を3割減少させ、すべての病気による死亡率を2割減少させること。ジムでの筋トレだけでなく自宅での筋トレでも同様の効果が得られたという報告がありました。
その他にも、心のストレスや不安を大幅に改善させる効果もあるという研究結果も出ています。
3分程度でも高揚感ももたらすドーパミンやアドレナリンが分泌され、集中力の向上やストレス軽減効果があると知られるようになってきました。
また20分以上の長めの運動をすると、セロトニンの分泌や幸せホルモンと呼ばれるエンドルフィンという物質が放出され、さらに高揚感が増し孤独感の解消もしやすくなることや、セロトニンによって睡眠の質が向上も期待できると言われています。
6、心臓、内臓も鍛えられます。
人は年齢を重ねるごとに筋肉を失っていきます。
50歳をすぎると1年に450グラム減少するとも。
( ゚Д゚)ウギャー
このまま何もしなければ……。
想像するだけで恐ろしいですね。
目に見える筋肉だけではありません。減少するのは心臓や内臓を動かす筋肉も減少するというわけです。
その現象を防ぐには
「運動すること」。
その基本となるのが「筋力トレーニング」と言えます。
。
筋力トレーニングをし、体を強くさせることで成長ホルモンを分泌させ続けることができ、そしてその成長ホルモンは心臓や内臓の動きを活発にさせて気力も充実させていきます。
運動効果のまとめ
運動することによって次のような効果があります。
1.呼吸の活性化(体内のガス交換促進作用)
2.自律神経の調整
3.体温の上昇と体温の調整
4.身体バランスの調整(姿勢の矯正)
5.血行促進
6.発汗作用の促進
7.運動への集中による気分転換
8.身体代謝アップ(エネルギーの吸収と発散が活発)
9.心肺機能や筋力向上
10.柔軟性の向上
たとえば体温が1度下がるだけでも
・免疫力37%低下する。
・感染症や風邪にかかりやすく、治りにくくなる。
・基礎代謝は12%低下し、消費エネルギーも約200~500kcal消費されなくなり、体重も増えやすくなってしまう。
・体内酵素の働きが50%低下して栄養・吸収とエネルギー産が減り精悍力が低下。
・がん細胞が活性化しやすい状態となってしまう。
と言われています。
ですので、これからも長い間、健康な心や肉体を維持しようと思うのであるなら、運動、その中でも筋力トレーニングというものは欠かせないものだと言えるでしょう。
1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ
これは、厚生労働省の平成17年度生活予防週間実施要綱におけるキャッチフレーズです。
人は食事を必ず摂っていますが、運動をほとんどすることがない方が多いために、運動を1番目においたそうです。
ほとんど運動をしない……。
これは、ちょっと悲しいですね。
人の筋肉や機能は加齢や体力低下とともに衰え、体を守ろうと防衛本能が働いて、基礎代謝も落ちて痩せにくい体へと変化していきます。
人の筋肉が加齢とともに衰える以上、自身の生活スタイルも変化させていく必要があり、食事を制限した「だけ」で痩せるという目標は難しいものです。
筋トレなどの運動をして筋肉に刺激を与えると、成長ホルモンやアドレナリンといった物質が分泌されて、血行を良くして基礎代謝も向上していきます。つまり、運動すると、体が「若々しい」状態へと近づいていくわけです。
その肉体が若々しければ、体も「痩せやすい」状態に変化していくわけです。
痩せるため、今の体型を維持するためには食事制限だけでは限界があります。そこで運動して筋肉に刺激を与え、健康なからだづくりをすることが大切となります。
新型コロナウイルスの影響により自宅にいる機会が多くなり、運動不足に不安やストレスからの過食、お酒の飲みすぎ、家庭内のトラブルといった問題が生じました。
こうした閉塞した生活も心身に悪影響を及ぼしていきます。
積極的に筋トレなどの運動をして心身の健康維持に努めていきましょう。