脂肪についてあれこれ
脂肪……ダイエットの大敵とも呼べる物質で、「こんなもの要らない!」と親の仇のように憎んで、これを避けるために「脂肪ゼロ」な食品を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
しかし、脂肪というものはそんなに悪いものなのでしょうか。
そもそも脂肪て、どんな役割があるのでしょうか。
内臓には脂肪がつきやすい
ひとのからだというのは、もともと内臓まわりに脂肪をつけようとします。
これは脂肪の性質として、ひとのからだを守ろうとする保護作用が働くからです。
脂肪というものは柔軟性があり、断熱性や緩衝材としての役割を持っています。
内臓を守るには、脂肪という物質はとても重要な存在ではあるのです。
しかし、過剰な摂取がからだに悪影響を及ぼすのも、ご存知のところでしょう。
「脂肪」とは?
脂肪とは炭水化物(糖類)、たんぱく質、脂肪の「三大栄養素」のひとつで、英語で書くと「fat」という単語になります。細胞などの身体組織やホルモン等の原料となり,生命活動に必須な栄養分であります。
脂肪といっても種類や働き方は様々であり、植物性油脂や動物性油脂、「コレステロール」「皮下脂肪」や「内臓脂肪」などといったものがありますが、これらのうち、体内に存在する脂肪のすべてを総称したものが、いわゆる「体脂肪」と呼ばれています。
「脂肪」の種類
脂肪が体内に入って「体脂肪」になるわけですが、「体脂肪」は分解されてそれぞれ多様な働きをしたり、保護のために蓄えられたりします。全身の皮下に蓄えられた脂肪を「皮下脂肪」、腹部の腸間膜に蓄えられた脂肪を「内臓脂肪」と呼びます。
「皮下脂肪」は女性につきやすく、「内臓脂肪」は男性につきやすい。
「皮下脂肪」は体形に変化をもたらしやすい性質がありますが、病気のリスクは低く減らしにくい脂肪です。一方で「内臓脂肪」は減らしやすい脂肪ですが、過剰な脂肪は病気のリスクが高めます。
体内に入り分解された脂肪には、主に四つの脂肪が存在し、それぞれには役割があります。
四つの脂肪
・コレステロール
・中性脂肪
・リン脂質
・遊離脂肪酸
(1) コレステロール
主な働きとしては、からだの細胞膜をつくること。
多すぎても困りますが、これが不足すると、細胞が徐々に弱くなり、肌がぼろぼろになるなど悪影響を及ぼします。
また、ホルモンの原料になる性ホルモン、副腎皮質ホルモンをつくりだすには不可欠の物質となります。これらが不足すると、女性の場合は生理不順、男性の場合は精力減退を引き起こしてしまいます。
そして、コレステロールには、脂肪を分解して燃焼させやすくするという機能があるという「胆汁酸(たんじゅうさん)」の原料にもなります。
悪い印象ばかりなコレステロールですが、こんな驚きの役割があったんですね。
(2) 中性脂肪
からだのエネルギー源としての役割を持つ物質。
糖だけでは足りなくなった時に使われますが、ダイエットはこの仕組みを利用したものです。
また「皮下脂肪」や「内臓脂肪」に蓄えられることで衝撃や保温などからだを守り、内臓自体を保護する役目もあります。
そのため、中性脂肪が少なくなりすぎると、からだをまもるものがなくなり、疲れやすいからだになってしまいますから、中性脂肪も人には欠かせない物質と言えます。
(3) リン脂質
このリン脂質もコレステロールと同様、細胞膜をつくる役割があります。
脂は水に溶けにくいため、コレステロールによってつくりだされた胆汁酸によって吸収されやすくするという流れがありますが、リン脂質は脂肪でありながら水と脂肪の中間といった性質があり、水になじみにくい物質を水になじませて、運搬や吸収しやすくさせるという働きもあります。
(4) 遊離脂肪酸
中性脂肪が分解されてできる物質。
主にエネルギー源として使われ、遊離脂肪酸をエネルギーとして使用する際は有酸素運動で消費されます。
有酸素運動が脂肪燃焼に有効と言われるのもこのためですが、「中性脂肪」の欄で書きましたように、「糖だけでは足りなくなった時」に中性脂肪が分解されて使用されるので、酸素を必要とせずに糖をエネルギーとする無酸素運動の筋力トレーニングを行うと、糖が使用された状態になるので、「脂肪が燃焼しやすい状態になる」というわけです。
効率の良い脂肪燃焼が「筋トレと有酸素運動」というのもこのためです。
肥満は「モナリザ症候群」になりやすい
脂肪といったら「肥満」のイメージが付き物ですが別のページ「どうして筋力トレーニングするの」でも書きましたように、肥満になると「モナリザ症候群」というものになりやすくなります。
「モナリザ症候群」とは(Most obesity known are low in sympathetic activity)の略ごで、交感神経の働きが低下とともに摂取量が平均以下でも肥満が維持されている状態にあります。
怪我や疲労を恐れて食事制限を優先する方もいらっしゃると思いますが、過食により交感神経が低下しエネルギー消費も低下している場合もあります。
運動すると血流が活性化することで交感神経も刺激されるので、ダンベル、ペットボトルなどを用いて、ゆっくりとしたスロートレーニングなどをおススメしたいところです。
寝る前に食べると太るのは何故
寝る前に食べるとなぜ太るのか。
昼と同じだけの量を食べたとしても夜に食べた方が脂肪としてからだに蓄積されてしまいがち。
それは夜間になると副交感神経が食べ物の吸収を高めようと働いているからです。
胃も休んだ状態になるので、起きている時のように、スムーズに消費されず体に蓄えられた状態になり、これが脂肪という形になって吸収されてしまいます。
胃に食べ物が入って消化されるまで4時間かかるそうなので、少なくとも就寝4時間前までには食事を済ませた方が良いと言われています。
脂肪をつけないために6つのこと
このように、脂肪はわたしたちのからだに大切なものですが、過剰に摂りすぎるとからだに悪影響を及ぼし、肥満に悩んでいる方が多いのもまた事実。
運動が良いということについては既に書いているので、食事方法においては次の点に気をつけると良いと言われています。
1 お肉の脂身はカットする
2 食物繊維の摂取を心掛ける
3 甘いものを控える
4 油で揚げたお菓子を控える
5 アルコールはほどほどにする
6 食事の後にはお茶を飲む
などです。
以上6つの中で、「お茶を飲む」が気になる方もいると思われますが、お茶には脂肪の吸収を阻害する効果があります。
お茶の効果
1 腸内環境を良くする
2 血圧を一定に保つ
3 口臭を抑制する
4 虫歯を予防する
5 胃潰瘍の改善や予防
6 ウィルス感染を予防する
7 抗アレルギー作用
8 活性酸素を抑える
9 がんの発生を抑制する
10 中性脂肪の分解作用
11 脂肪の吸収抑制作用
12 コレステロールの上昇を抑える
このように素晴らしい効果を持つ「お茶」ですが、ペットボトルのお茶では効果が薄いと言われています。
なぜなら、お茶の渋みを苦手として飲みやすくするために成分を薄めている商品が多いからです。
社団法人静岡県茶業会議所によりますと、ペットボトルのお茶は250グラムにつき2グラム程度しか使用しないとか。
平成11年に国民生活センターが調べたところでは、ペットボトルに入れられたお茶のポリフェノール含有量を調べたところ、茶葉から入れたものにくらべて総じて少なかったとか。
ポリフェノールはカテキンに含まれ、お茶の渋みはタンニン、別の名でカテキンとも言われています。そのカテキンが飲みやすさ重視のために少なくなっているわけですから、脂肪吸収したいのであれば、お茶は茶葉を使用して飲む方が良いとおもわれます。
ティーバッグでも茶葉と同様の効果が得られます。
咀嚼(そしゃく)が代謝を高めます
お茶を飲む、食物繊維を摂る。油をさける……。
この他にも「よく噛むこと」で代謝を高める効果があります。
よく噛んで食べると食物繊維の多い食事でもビタミンやミネラルの吸収を促し、唾液がたくさんでて代謝を改善してくれます。
食事を摂った際に、食べ物を噛んだり消化、吸収するなどする過程で消費エネルギーが発生します。
これをDIT(食事誘導性体熱産生)と言いますが、これもダイエットに有効な手段と言えます。
DITは活動的な生活、よく噛んで美味しく味わい、リラックスした環境などでその効果が高まっていきます。
中性脂肪を減らすコツ
中性脂肪を増やしがちな肉は、脂質が少なく低カロリーの肉は少ないものが理想的ですが、調理でも工夫次第で減らすことが可能です。
「茹でる・蒸す」などといった調理油を使わない調理方法がシンプルで良いとされています。
その他のあぶらを減らすコツ
・脂身や鶏肉の皮をとる
牛肉、豚肉の脂身や鶏肉の皮などは調理前に切り落とせばその分脂質を減らすことができます・
・熱湯をつけてあぶらを落とす
ざるなどに載せて熱湯をかけると余分な脂を減らせます。
・薄切りにする
厚みのある肉は薄切りにすることで表面積が増加。すると調理の際にあぶらが落ちやすくなります。
・フライパンより網で焼く
網焼きの方が脂質を20%ダウンできるようになります。煮込み料理でも焼いてから使うことでうまみを逃さず脂質を減らすことが出来ます。
・下ゆでで浮いてきたあぶらをとる
ゆでたものを冷ますと表面にあぶらが白く固まって浮かんでくるので取り除いてから使ってみましょう。
食物繊維をしっかり摂る
食物繊維は中性脂肪を減らすに良いとされていますが、食物繊維には町内で余分な中性脂肪やコレステロール、糖分などを取り込み、大概に排泄する作用があります。
仕組みとしては
食物繊維を摂取 ⇒ 繊維が腸管の内壁に付着 ⇒ 繊維が中性脂肪、コレステロール、脂肪を取り込み排泄
このような流れで外に出してしまうので、食後に中性脂肪値や血糖値を下げることができるのです。
食物繊維にも水に溶けにくい、きのこや豆、大根などの「不溶性食物繊維」と、水に溶けるりんごにこんにゃく、もずくなどの「水溶性食物繊維」などがあります。
食物繊維は1日25gを摂ることが理想とされています。
日本人は不足しがちと言われているので、積極的に摂ることを意識した食生活を送りましょう。
終わりに
脂肪はひとのからだに欠かせない栄養素のひとつではありますが、過剰な摂取によって人体に悪影響を及ぼしてしまいます。
ダイエットを行う際にやみくもに食事制限をするのではなく、脂肪というものにどういった性質があるかという認識があれば、その脂肪を燃焼するためのプログラムも組みやすくなると思われます。
まずは筋トレ+有酸素運動がおススメです。
参考
山田陽子著「おなかの脂肪がミルミルとれる!」
ダイエット協会テキスト
「毎日が発見」2018年1月号NO .168
暮らしの実用シリーズ「よくわかる中性脂肪」
成美出版「コレステロールを下げる生活事典」
佐藤義昭著「誰も教えなかった本物のダイエット」